【Interview】安原兵衛⑤ 「今はもの凄い数のアイドルが凌ぎを削っているように、ある程度尖った楽曲を作らないことには、他と区別をつけられなくなる。」

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はじめに

「音楽で生きていく。」インタビュー、安原兵衛の第5回目(全5回中)。

1回目の記事はこちら!

【Interview】「音楽で生きていく。」安原兵衛 ①(2019.3.13)

2019年3月13日

2回目の記事はこちら!

【Interview】安原兵衛②「一つの機材を買うのにもバイクを購入できるくらいの金額を要していたように、つねにローンとの戦いの日々でもありました(笑)。」

2019年3月14日

3回目の記事はこちら!

【interview】安原兵衛④「ここ最近やっているアーティストの方々は時代感を求めて僕に頼んでくる方が多いように、そこは裏切らないようにと僕も感性を若作りしています(笑)。」

2019年3月27日

4回目の記事はこちら!

【Interview】安原兵衛②「一つの機材を買うのにもバイクを購入できるくらいの金額を要していたように、つねにローンとの戦いの日々でもありました(笑)。」

2019年3月14日

音楽で生きていく。

安原兵衛 第5回目

――前回も言ってましたが、仕事を待つのではなく、今は、みずから仕事を仕掛けてゆくべき時代なのでしょうか?

安原 それも必要だと僕は感じています。僕自身も最近は、音楽業界をより幅広い視点で捉え、CMやゲーム、動画音楽の制作仕事も積極的に行っています。中でも一番面白さを感じているのがソーシャルゲームのマーケット。そこにはもっと積極的に踏み込んでいきたいなと思い、みずから仕掛けてゆくことも行っています。

――安原さんは、アイドル関係の作曲/編曲からミックス作業までとアイドルシーンにも積極的に参加しています。中でも、ゆるめるモ!さんでは、安原さん自身が音楽制作面で柔軟に遊んでいる印象も覚えます。

安原 良い意味で遊んでいますね。近藤さん案件として手掛けたdelaやROSARIO+CROSSもそうですけど、基本的に自由にやらせていただいてます。とくにゆるめるモ!はそうですが、本当に楽しんで音楽作りが出来る仕事環境がアイドル現場では非常に増えました。

今は、バブル期のときのように1曲ヒットを出せば食える時代じゃないので、相応に数を重ねる必要もあるんですけど。アイドルの世界は自由に制作を任せてもらえるように、ストレスフリーな面が強いのが嬉しいこと。ときには、僕の特技を上手く反映もさせてくれる。ゆるめるモ!の場合は、そこを面白がって使っていただいていますからね。

――アイドル媒体のほうが表現の柔軟性もあるし自由度が高いと、みなさん言いますからね。

安原 「今はアイドル楽曲のほうが音楽的だ」という話をよく聞くように、確かにそこは一理あるなと思います。

――安原さんもストレスフリーの環境と言ってたように、作り手側が楽しんで作れる環境こそ一番良いのでしょうね。

安原 そうですね。今は、音楽的な面を評価してアイドルを支持する方が増えているのも要因としてあるからなんでしょうね。今はもの凄い数のアイドルが凌ぎを削っているように、ある程度尖った楽曲を作らないことには他と区別をつけられなくなる。そういう面で頼られると嬉しくもなりますから。

――アーティストによっては、自分の色に合わせてくれという人もいるのでしょうか?

安原 CMや動画制作、ゲームなどの世界ではもちろんクライアント側の要望としての声はありますけど、僕が関わっているアーティスト界隈では「こういう風に作ってくれ」と事細かにオーダーしてくる人はいないですね。

アニソン界隈にしても、僕が長年関わっている「テニスの王子様」の場合は、培った歴史がすっごくあるので、そこの枠内に納めなきゃいけないですけど、その枠の中では自由に、いろんなジャンルをやらせてもらっています。

今後クリエイターとして成していきたい方は、個人としてのブランド力を身につけないときついと思います。

――これから作家を目指したい方にアドバイスをお願いします。

安原 これは、僕がtwitterにもちょこちょこ書いていることですけど。40代へ向かって駆け続けてゆく30代のときが、一番脂の乗っていく時期なんですよ。実際に仕事面でも充実していきますし、「このまま40代に入ってもやっていけるよ」的な発想で、僕自身もそのまま駆け続けてきました。

でも、40歳を過ぎたら、まわりからは次第に敬遠されがちになる。理由は、レコーディングの現場で仕事を発注するプロデューサーやディレクターの年齢が40歳前後くらいまでが主であること。そうなると、年下世代のほうが頼みやすくなるぶん、自然と若手へ仕事のオファーを振ってゆく。

そこで、40代以上の作家には何が必要となるか…というと、音楽以外の武器を持つこと。それがプロデュース機能であり、レーベル機能であるなど、いわゆる音楽を作る以外のスキルを持つという必要性。現場のディレクターが年上の人に頼むメリットとして求めているのが、そこの+αの部分。なので、そのスキルを身につけておくと、より長くやっていけるなと僕は感じています。



――作家としての技量のアップはもちろん、そこに+αの要素があったほうがいいわけですね。

安原 僕は、そう感じています。今の僕自身が、家にレコーディング環境を持ったスタジオを保有しているのはもちろん。ミックスやマスタリングまで行えば、作った作品をリリースするレーベル業まで請け負っています。それに加え、今後はマネージメントもやっていこうと思っているように、数年以上先とはいえ、自分が50代をどう迎えてゆくかも視野に入れた用意は、今から心がけています。

――今の安原さん自身が、小さな規模とはいえメディア機能を成していますよね。今は、そうなっていくべき時代なのでしょうか?

安原 そうだと思います。今は、マスから個の時代になりだしている。今後クリエイターとして成していきたい方は、個人としてのブランド力を身につけないときつくなるんじゃないかと思います。

表ではお金の匂いを一切無臭にさせ、裏でちゃんとジビネスとして動かす手法をとても尊敬しています。

――CDが売れていた時代は印税商売で食べていけましたけど、CD自体が廃れ出している今は、そこも厳しくなっていませんか?

安原 そこは、楽曲を巡るお金の流れがわかっていれば、その対処方法はおのずと見えてくること。メジャーで活動しているアーティストたちには、どういう流れで、どの程度のお金が入ってくるのか。そのお金の流れの中に、レーベルはどう関わっているのか。

アーティストや作家として生活していく以上、それこそ「音楽で生きていく」うえで、そこを把握してゆくのはとても大事なこと。
僕が今、その流れとして押し進めているのがサブスクリプションの世界。

実際、twitterに「サブスクリプションで1再生されるとこういう配分ですよ」と書いたら、いろんな人たちから反響があったように、興味関心を抱いている人たちは多いなと感じています。

――サブスクリプションだと、今はまだまだ売り上げは厳しくないですか?

安原 Spotifyを例に取るなら、アリアナ・グランデの楽曲は世界中のSpotifyユーザーたちの間で1日大体600万回から700万回再生を稼いでるんですよ。 海外のサブスクリプションでの1再生回数に於ける収益は0.4円。Apple Musicはもう少し高い価格になる。

そうなると、楽曲を保有するレーベル自体に、1日だけでどのくらいの金額が入ってくるのかは計算するとわかりますよね。ただそこからアリアナ・グランデのもとにどれだけ入っていくのか。日本の印税分配のことはネットで調べるとわかるのですが、海外においてはどうなっているのかとても興味があります。

ただ一つ言えるのは、日本は分配率がものすごく低いということ。 今、日本のサブスクリプションで一番再生回数が多いのがあいみょんさん。彼女で、大体1日の再生回数が6万回くらい。

そのうえで印税システムに当てはめ計算すると、確かに日本ではまだまだ厳しい環境です。でも、日本でもその環境の底上げがもっと進めば、「CDが売れなくて悲観していた時代は何だったんだ」となるし、世界基準で考えればそうなっていくのは時間の問題なんですよ。

――今は日本も、CDじゃないところでどうお金を稼ぐかを考えていくべき時代に来ているんですね。

安原 そうなんですけど。ただ、日本は今でもCDへ利益を求めざるを得ない状況とも言えます。

――世界の音楽市場の現状もつかんだうえで、それをどう日本の市場へ当てはめ対応してゆくかも必要なんでしょうね。

安原 アーティストも作家も、それを知ったうえで、どう自分の音楽を発信し、どうビジネスに変えてゆくかのブランディングを持つかを問われるのが今であり、これからの時代。もはや、「どうか、わたしの音楽を売ってください」という時代じゃない気がしています。

音楽業界の中、世間一般的な見え方として、音楽とお金は水と油のようなもの。あまりにも利益を求めた姿を見せて音楽を作っていると、心の豊かさを求めて音楽に触れているユーザーの夢が醒めてしまうじゃないですか。

僕はYOSHIKIさんのように、表ではお金の匂いを一切無臭にさせ、裏でちゃんとジビネスとして動かすという手法をとても尊敬しています。常に夢を持たせてくれる。そこに長けた方こそ、これから長く音楽の世界で、「音楽で生きていける」のかなと僕は思います。

――そういう方が、これからは長くやっていける時代になっていくわけですね。

安原 そうですね。ちょっとずつでいいから、みなさんもこれまでとは意識を変えながら。そのうえで、自分独自の武器もたくさん携えてください。

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