はじめに
音楽で生きていく。」インタビュー、音楽家、近藤薫の第4回目(全4回中)
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音楽で生きていく。第4回
――近藤さん自身、つねに「ミュージシャンとしての意識」と「職業作家としての視点」「会社経営」のバランスを大切にしていません?
近藤薫 どの人もみんな言いますけど、経営者とアーティストを並走させるのはすごく難しいこと。アーティストとしてのこだわりを出してしまうと経営的にはNGになることもあるように、そこのバランスは今でも葛藤しています。
たとえば、予算面も考慮して決めた規定時間内での制作の中、アーティストとしての自分の意識としては、あと2時間スタジオを延長して、手がけているアーティストの成長を促し、こだわりを追求し、よりクリエイターとして良い作品にしたい。でも経営者観点では、その2時間にこだわったところで数字は変わらない。むしろ、予算が増えるという現実面がある。そういう面での葛藤は、常にしていることです。
――近藤薫名義での制作である以上、これ以上の範疇は、自分の印象を変えてしまうから出来ないなど、そういう境界線もあるのでしょうか。
近藤薫 あまり深く考えたことはないですけど、「これ、近藤薫さんが作った曲なの?」とマイナス面で言われないように、クオリティ面に於ける自分の中でのこだわりのラインは引いています。
――近藤さんの場合、経営者としての顔も持ち合わせています。そうなると音楽以外の、それこそビジネスとして覚えなきゃいけないこともたくさん出てきますよね。
近藤薫 アーティスト活動をしているだけでは考える必要のなかったことがいろいろ出てくれば、それを覚え続けてきました。僕のように、会社運営も兼業しているアーティストの方々は、同じような苦労をなさってきたんだなとも想像しています。
――経営を誰かに任せてとはしたくなかったわけですでだ。
近藤薫 人に任せると、単純にコストがかかりますからね(笑)。これは、「音楽で生きていく」という原点のテーマにも重なることですけど。今は、一人で何役もやらないとなかなか食べてはいけない時代。餅は餅屋でいたいですけど、なかなかそうはいかないのが今ですからね。
そこがアーティストと経営者の2つを同時に行うことの難しさであり、面白さだと思います。
――近藤薫さんは、みずから「6notes」というメディア(情報サイト)も作りました。
近藤薫 昔も今も、プロモーションと言えば「曲が出来ました、ラジオ局で流してください」「大きなWEB媒体に載せてください」とお願いをしてゆくスタイルじゃないですか。それも大切ですが、それだけではなく、自分ですべてを発信出来たほうがもっと効果的じゃないかと思ったことが音楽情報サイトである「6notes」誕生のきっかけでした。
つまり、自分の持つメディアもプロモーションの一つになればいいなということ。まして今は、何事も自分で発信していける時代。その一つとしてあるプロモーションに関しても、昔のようにメディア側に頭を下げて「お願いします」という時代でもないような気がしています。
――それこそ地上派の番組など大きいメディアへの露出を望まなければ、今は個人でも情報を発信していける時代ですからね。
近藤薫 そうなんですよね。
――そこでよく問われるのが、「じゃあ、メジャーのあり方は何なのか」「メジャーに求めるものは何なのか」という議題。
近藤薫 メジャーである以上、メジャーらしい活動をして欲しい願望は、僕自身見ていて感じること。それこそメジャーのレコード会社であるなら、もっとミリオンのような大ヒットを目指しての展開を描いて欲しいんですよね。だけど現状は、ちょっと集客がある即戦力になるようなグループ、アーティストに声をかけては、目先の利益をみたいなところもありますから。
――近藤さんご自身がいろんなアーティストの面倒を見始めたことで、ビジネスマンとしていろんな角度から物事を観る必要性も覚えているようですね。
近藤薫 そこがアーティストと経営者の2つを同時に行うことの難しさであり、面白さだなとも思います。
周年というのは、自分が積み重ねた活動へスポットを与えるきっかけにもなること。
――アーティストとして自分のプライド、経営者としての自分。気がついたら20年間がむしゃらにやってきた結果、今へ繋がったことなのでしょうか?
近藤薫 そうですね。僕自身、音楽の仕事へ携わっている以上、たとえお客さんがいなくなっても現役でやりたいと思っています。理由は、自分が現役でいるからこそ、若いアーティストたちに言う言葉へも説得力を持たせられるなと思ってのこと。
自分が今も現役で活動しているからこそ、「歌、下手くそだね」「もっとギターを練習したほうがいいよ」の言葉へ信憑性を持たせられる。
現役を退いていたら、「昔は弾けても、今は弾けてないじゃないですか」「昔はミュージシャンだったかも知れないけど、今は歌っても弾いてもいないじゃないですか」と思われるように、そこの説得力に差が生まれてゆく。要は、そういうことですよね。
――今年の6月2日で、近藤さんはデビューから丸20年を迎えます。アーティストとして活動を続けてゆく中、「周年」という区切りは、活動を継続するうえでポイントになることでしょうか。
近藤薫 そうですね。ここまでやったという区切りをつけることで、また次のステップへという考えも生まれますからね。
――アーティストの方は、5年毎の周期や周年を一つのきっかけにすることが実際多いですからね。
近藤薫 今回の僕の20周年も、そのきっかけになればいいなと思います。ただ、僕がこれからもやるべきことは、今までと変わらず一個一個の出会いを確かな実績として積み上げていくこと。
周年というのは、自分が積み重ねた活動へスポットを与えるきっかけにもなること。それをやるためにいろいろ準備を行えば、過去の曲を洗い直したりもするように。アーティストとしての自分を振り返るいいきっかけにもなるなぁとは素直に思います。
>>第2回目のゲストは安原兵衛さん