【対談】安原兵衛 × 近藤薫「今年でCDビジネスは最期なんじゃないかなぁと思っています。だって売れないもん(笑)」

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はじめに

安原兵衛くん。音楽家としても、人としても、ビジネスマンとしても尊敬する友人のひとり。過去と、今と、未来をバランス良くみている。なかなか出来そうでできない。

ただ、曲を作ってライブをやっているだけでは未来はない。そんな暮らしにはもちろん憧れはあるけど、それだけじゃきっとダメなんだ。そんな会話をしたことを覚えている。僕が一方的に話してただけかもしれないが(笑)、しっかりと頷いてくれた。

そんな安原兵衛くんに、僕企画の連載に参加してもらった。

【Interview】「音楽で生きていく。」安原兵衛 ①(2019.3.13)

2019年3月13日

最後に予定はしていなかったが、取材後「お疲れ様でした!」と同時に話し出した、熱い会話を対談形式で文字化してみた。是非、読んでほしい。

音楽は生きていく。【対談】

――近藤さんは安原さんのどの辺に惚れ込んで発注をしているのか、まずはそこから教えてください。

近藤 普通、人に発注する場合は何行もの説明が必要なんですけど。兵衛くんの場合、人間性はもちろん、兵衛くん自身がアーティスト色を持っていれば、職人的な気質もあり、作家としてのセンスにも長けている。

さらに、音楽ビジネスも把握している。だから、余計な説明がいらないんですよね。何より、こちらが求める空気感をしっかりつかんでくれるし、状況も把握してくれる。もちろん、ざっくりと説明はしますけど、その手間がいらないのがお願いしやすいところ。しかも兵衛くんは、発注する僕に対していろいろ提案もしてくれる。

人にビジネスを発注した場合、100をお願いしたら100をしっかりやってくれる人もいれば、兵衛くんのようにお願いをした100を120にして返してくれる人もいる。たとえそれが80であっても、こちらの予測を嬉しく裏切る80という形にしてくれる。その面白さを、僕は兵衛くんとの仕事に覚えています。

安原 近藤さんとの付き合いも長いから、今じゃ絵文字でもその意図が伝わるんじゃないかくらい(笑)。初めましての人から数行程度での発注が届くと、手掛けるアーティストの歴史背景がわからなくなるから不安もあるんですけど。

近藤さんは、歴史も背景もスタンスも長くやらせていただいてるので全部わかっていますからね。

――お二人の出会いのきっかけも教えてください。

近藤 最初は、「テニスの王子様」の制作現場でしたよね。僕が「テニスの王子様」用に提供した楽曲と兵衛くんが提供した楽曲が同じアルバムに入ることから、偶然スタジオでお会いしたんですよ。

安原 前半組、後半組としてお会いしたんですよね。

近藤 そこでご挨拶して、互いの存在を知ってというところが始まりでした。ただ、その当時は僕もまだプロダクションへ所属していたし、兵衛くんもいろんなことをやっていたように、すぐに交わることはなかったんですけど。僕が自分で音楽制作をやるようになり、アレンジャーやエンジニアを探すうえで頭の中に浮かんだのが兵衛くんでした。

僕の中での兵衛くんは、大成功した売れっ子作家でありエンジニアの方。僕がレーベルとして手掛けるインディーズの、しかも新人のアーティストを手掛けていただくにはギャラも高いだろうし、恐れ多いなと思い、頼みたいけど遠慮していたところはあったんですけど。兵衛くんと出会うたびに、「何かあったら言ってください」と気軽に言ってくれたことから、お願いをしたのがきっかけでした。

ただ、アレンジャーとしての仕事面での実績が優れている方のように、今でも僕の中ではアレンジの仕事を依頼するには敷居の高い方なんですよ。なので、僕の場合はエンジニアリングやミックスダウン、マスタリングを兵衛くんに手掛けていただくことが主ですし、実際多く手掛けてもらっています。

お互いに、時代がいろんな面で切り替わる瞬間も体験してきた世代ですからね。

――お互いの活かしどころをわかっているところが、今の関係を作っているわけですね。

安原 そうですね。個人的に、アレンジは若い人がやっていったほうがいい感じがしています。

近藤 楽曲制作もそうですよね。その辺、頑固になることなく、どう柔軟に対応していくかが、長くこの世界で活動していけるのかどうかの境目になること。今は一人何役もやらなきゃいけない時代ですけど、あまりにもこだわりを持ち過ぎると老害にもなっちゃいますしね。

――お二人とも世代は近い?

安原 二つ違いですよね。

近藤 でも、この世代の二つ違いは大きいですよ。

安原 そうですね。昭和生まれの二つ違いはデカいです(笑)。



――お互いにいい時代も経験していれば、大変さも知っている方々だ。

近藤 お互いに、時代がいろんな面で切り替わる瞬間も体験してきた世代ですからね。それこそスィートショップの1stアルバムなんて、まだ48chをまわして録っていましたし。

安原 その時期に一度、どでかい変革期を感じました。僕が音楽業界に入り込めたのも、その変革の時代の中、新たなあるべき姿へ先陣を切れたことからなんです。今は第二期というべきなのか、CDが無くなるという新たな変革期の時代の真っ只中にいるなと思います。

近藤 昔は、DATをマスターにしていた時代。今の若い人たちは、DATやMDの存在さえ知らないんじゃないですかねぇ。

安原 あの当時は、まだネット環境も整っていなかったから、たとえばテレビ関連の作業の場合、「ここを直して欲しい」と修正の依頼があるたび、その音源を手渡すためにバイク便を飛ばしてやり取りをしていた時代ですからね。

近藤 まだ、容量の大きい楽曲をデータでは送れなかった時代だよね。

安原 あのときはまだ、カセットに落としてやり取りをしていた時代でした。

兵衛くんもtwitterで呟いていましたけど、今年でCDビジネスは最期かなと思っています。

――お互いに感性の波長が合うからこそ、今も一緒にやり続けているわけですよね。

近藤 そうです。兵衛くんがやってくれるのなら、僕はずっとお願いをしたいですからね。

安原 近藤さんは今、この新しい変革期となる時代を自分なりの手法を持って切り開いている方。その姿こそ、僕自身のモチベーションをかなり上げてくれています。

近藤 僕こそ、兵衛くんにはいろいろ教えてもらっていますよ。自分が今までと違うことをやろうとしているのであれば、兵衛くんはそれを理解してくれてる方の一人。まだまだCDにこだわっている人も当然いますし、それも悪いことじゃないですけど。僕も兵衛くんも、そこではなく、新しいことをやっていかないと駄目だなと思っているタイプ。そこの面では、僕も、兵衛くんにはいろいろ相談や質問をすることも多いですし。

――お二人とも、自分自身が「発信するメディア」になろうとしていますよね。

近藤 それを肌感としてわかるかわからないかで、今後の音楽で生きる人生が違ってくると思います。

安原 ほんと、そうですよねぇ。近藤さんは、レーベルとしてもう100タイトル以上出しているんですよね。

近藤 品番でいったら100は超えましたね。

安原 僅か数年で100タイトル以上の作品をリリースすれば、それらの楽曲を一人で管理されているように、それらのコンテンツを今後どう利用していくのかすっごく楽しみなんです。近藤さん自身がCDをまだまだ流通させ続けるのか、配信とどう向き合っていき、どうやって利益を上げていくのか、すごく興味があります。

近藤 兵衛くんもtwitterで呟いていましたけど、今年でCDビジネスは最期なんじゃないかなぁと思っています。だって本当にCD、売れないもん(笑)もちろん、アイドル現場のように、CDを物販用の商品として用いてなど、CD自体としての需要はまだあるのかも知れないし、CDがないと商業施設などの現場でのイベントが出来ないから、もちろん完全にゼロっていう訳にはいかないだろうけど。それでも、無理やりそれを終わらせ、新しいやり方へ舵取りをしていかないと、今のやり方は本当に終わらないと思うので。

安原 今、ゾンビと人間が戦っているんですけど、今やゾンビのほうが多いのに、ゾンビになったほうがすごいハッピーになれるのに、少ない人間がゾンビに立ち向かっているのが今のCD市場だなと思っていて。

――だからこそ、変革しなきゃいけない。

安原 そうですねぇ。そうしていかないとアーティストが可哀相ですからね。CDで需要を稼ぐ時代を終わらせ、新しいビジネスのフォーマットを。サブスクリプション用のフォーマットを作らないと、本当にアーティストにお金が入らなくなりますからね。

近藤 確かに、今もCDは売り上げに繋がりますけど、今後のためにも、やり方を変えてかなきゃいけないのは僕も実感していること。僕も、兵衛くんも、まさに向いている意識は同じなんですけど。兵衛くんは、同じようなことをやっていくにしても、技術者寄りでいて欲しいなとも僕は思っています。僕はそこの追求を、ある意味兵衛くんのような人たちに任せちゃっているからこそ、兵衛くんにはそこを突き詰めつつも新しいこともやって欲しい。ぜひ、これからもよろしくお願いします。

安原 こちらこそ、よろしくお願いします。

TEXT:長澤智典

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