はじめに
1987年に結成、1991年にメジャーデビューしてから、ずっと時代に捉われず愛され続けるバンド「Spitz(スピッツ)」。
叙情的な歌詞と、分かりやすいメロディー、草野マサムネさんのクリアな美声が支持されて、不動のポジションを築いている。
出逢い
僕がデビューしたのは1999年6月なのですが、スピッツとレコード会社も同じ(当時は「ポリドール」と呼んでいた)、しかもアーティスト担当、スタッフも同じ、そして何と、音楽プロデューサーが笹路正徳さん!というところまで同じでした。(きっと同じようなヒットを望まれてたに違いない、期待に応えられず、すみません)
その関係でデビューシングルをリリースした時に、一度、草野さんにもご挨拶させて頂いた事もあります。
もちろん純粋に音楽のファンであることには違いないのだけれど、職場も近かったという事や、自分自身も音楽制作を生業にしているという事もあり、ちょっとだけ普通とは違う観点でスピッツという音楽に触れてきたかもしれない。
覚えている言葉
バンドで活動中、スピッツの音楽プロデューサーでもあった笹路正徳さんがおっしゃっていた一言を今でもよく覚えています。
当時は何を言ってるのか全く分かりませんでした。メチャクチャ良い曲をたくさん世の中に送り出しているのに、凄くないというのはどういう事なんだろう?
テクニックは足枷に!
今だから良く分かる。凄いことをしていないというのは、作曲、演奏における音楽的な仕掛けやら、展開などの事です。例えばコード進行や、リズムパターンなどもそうだね。
- 「恐ろしくスキルフルに転調している!」
- 「変拍子バリバリでトリッキーさが気持ちいい!」
など、そういう事がほとんどない。
どちらかというと分かりやすい展開、音楽初心者でもコピーしやすいフレーズ、コード進行が多い。
今音楽制作を仕事でやっているから分かるんだけど、音楽的アイデアを詰め込むと、その技術的な所に耳や体がいってしまう。そうすると聴いていた歌詞や、ボーカルの音色が軽減して聴こえてくるんだよね。
音楽を伝える!という意味では、時にテクニックは足枷になるのかもしれない。
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シンプルにするには勇気がいる
どんなクリエイティブなこともそうだけど、アイデアを削ぎ落して、シンプルにするには勇気がいる。
例えば、
①
|C |G |Am G |F G |
のようなベーシックのコード進行があったとします。
すこし音楽をかじったことがあるクリエイターなら、
②
|Cadd9 |G/B |Am Am/G |F△7 F/G |
とかにしてしまう。
もちろんジャンルにもよるが。。。
それをスピッツは躊躇せず①のままプレイしていることが多い(多かった。とくに初期作品)。これは戦略的にしているのか、無意識でしているのかは分からない。
①のまま演奏するには、実に勇気がいるし、作曲者としてメンバーに伝えにくい(笑)
ただ、シンプルにプレイする事により、聴き手の心が歌詞に向いたりします。
もちろん、シンプルにしているから曲が良くないなんて事は全くない!メロディの良さは群を抜いているしね。
歌詞が良く聴こえてきて、胸に届くのはメロディがいいからでもある。
ただ、そこに中途半端に経験を重ねたミュージシャンのエゴみたいのが全く見られない。
Spitz(スピッツ)の音楽は、巡り巡って、簡単なのに誰にも真似できない音楽になっているのかもしれません。
無理やり選ぶ、好きな4曲!
少し古めの楽曲になってしまったけど、大好きな4曲。まぁ、4曲に絞れというのがまず無理なんだけど(笑)
スカーレット
通算15枚目のシングル曲ですね。アルバムは『フェイクファー』に収録されています。エレキギターのシンプルなアルペジオから入るサビ頭の曲。サビの頭、「離さない」と、締めの「無邪気なままの熱で」のフレーズが強烈に頭に残る。Aメロのマイナー感がたまらない哀愁感を出しています。
冷たい頬
「あなたのことを深く愛せるかしら」の出だしのフレーズで心を鷲掴みにされます。正直ここのフレーズ以降をあまり覚えていないことも多いです(笑)それくらいこの1フレーズの言葉とメロディーの一体感がヤバいです。これまたエレキギターの優しいアルペジオから入る曲。
青い車
この曲の何が好きかって言ったら、サビの歌詞!
「君の青い車で海へ行こう」というフレーズ。
これ、何気ないフレーズなんだけど、いろんなエッセンスが読み取れるんです。
まずこれ、「僕の車」じゃなく「君の車」と歌っているところ。僕のじゃなくて君のですよ!ここには男の優しさや思いやりが含まれてますね。実に深い!後は「青」という色。「青」からは瑞々しさとか、純粋さとか清潔感のようなものが汲み取れます。
そして最後に向かうゴールの「海」。これはこれから向かう未来を比喩しているはずです、きっと。
明日はまだ見ぬ「大きな海」なんです。
それを考えながら「君の青い車で海へ行こう」というフレーズを考えると、実に深い。寛大な男性の恋愛観が読み取れます。
うん、これは僕が想像しているだけかもしれないけど、スピッツの歌詞は完全に答えを言い切らず、聞き手にものを考えさせるようなものが多いと思います。が故に、自分のリアルと重ねられる。
凄いです、スピッツ。
猫になりたい
この楽曲は「青い車」のカップリング曲でリリースされました。歌詞の描写の仕方とか最高なんですが、もっと凄いのが、アレンジの音数です。よくこんなに薄い音でリリースしたなぁと思う。
今回の記事の「スピッツの凄い所」がまさにこの曲なのですが、本来これくらいメロディアスな曲で、切ない歌詞なら、サビでストリングス(弦管楽器)を入れたり、派手なコーラスを入れたり、シンセなんかもキラキラしたのを入れたり、とか、やりすぎていってしまうんです。
結果、何を一番聴かせたいか分からなくなる。
いわゆるアレンジ沼にはまっていくんですけど、この曲のアレンジは、Aメロは8分のベースに軽めのギターハーフミュートバッキング。その後も大げさに展開していかない。そりゃ、歌詞が飛び込んでくるよなぁ。もう、凄い勇気!
脱帽です。
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まとめ
誤解を恐れずに言うなら、スピッツがやっている音楽は、誰にでも一聴出来そうに感じる。ただ解説した通り、テクニック以上の技が楽曲、演奏の中に凝縮されているのです。同じようなことをやろうとして砕け散ったバンドは山のようにある。
スピッツというバンドは、まさに唯一無二の存在なのです!
弾き語りアレンジして歌いました!
知っておきたいinfomation
他にもスピッツの名演、名曲は沢山あります!「Apple Music」や「Spotify」などの聴き放題サービスなら、楽曲を1曲づつ購入しなくても、探している名曲たちに出会えます!こちらからチェック!>>関連記事>>「Apple Music」「Spotify」など、サブスク音楽配信、7つのサイトを比べてみた!
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