今回は「完成音源より、Demo音源の方が良かった。」と言われる、嬉しさと、悲しさについてです。
音楽制作の仕事をしていると、現場やスタッフさんからよく言われたり、耳にするのが「これ、完成音源より、Demo音源の方が良かったんじゃない!?」というやつ。
これは本当によくあること。まず、Demoと完成音源の説明をしましょう。
DEMO音源
そのプロジェクト、楽曲募集に対して、作家が「こんな曲ですよ」と伝えるための参考音源の事。ひと昔前はデモテープなんて言ったね。音源の内容としては、スタッフ、関係者に伝えるものなので、メロディとコードだけの簡単なものから、ほぼ完成系に近いアレンジ済みの音源まで様々です。ただ、昨今の音楽制作現場では自宅機材の成長のせいか、ほぼ完成に近い音源が提出される事がほとんどだ。
完成音源
その名の通り流通する最終音源。「Final Mix」と呼んだり、「完パケ音源」なんて呼ばれる事もある。音源が完成したことを「完パケた!」とか言ったりもする。
完全パッケージの略
簡単に言うと、「DEMO=練習」「完成音源=本番」という事になる。もちろん、完成音源の方が、製品として販売するので、予算もかかる。優秀なエンジニアも用意するし、スタジオだって良い!?所を抑える。なのに、完成した曲を関係者に聴かせると、「これ、DEMOの時の方が良くないですか?」「なんか、DEMO音源の方が好きでした。。」なんて事を言われたりする。
まぁ、DEMOも自分で作ったものだし、結局は褒めて頂いているからいいかぁ
クリエイターならこんな経験はあるはずですね。
では何故、本気で制作に挑んだ「完成音源」より、ラフな「DEMO音源」の方がいいと言われてしまうことがあるのか!?
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理由
①勢い
何と言ってもDEMOは、作家達の明日を決めてしまう音源なのです。計り知れない勢いと、魔力が込められてます。これはちょっとやそっとじゃ飛び越えられないのかもしれません。
②音圧の魔法
これは①の「勢い」を出すための手法でもあるんだけど、世の中、「大きな音=迫力があり、良く聴こえる」みたいなところがどうしてもあるのです。実際、テレビCMとかを観てると分かると思いますが、番組からCMに切り替わった瞬間、音量が大きくなり、リモコンでボリュームを下げた、みたいな経験はございませんか?そういう感覚があるので、作家達は音源を良く聴かせるために、レベル競争を始めるのです。DEMO音源を、マキシマイザーや、コンプレッサーで、音圧をめちゃくちゃ上げてきます。これが、①の「勢い」に繋がっていくのです。
③聴きすぎによる印象
コンペ等でDEMO音源がたくさん集められて選曲する会議等があるとします。当然、ヒットを狙った楽曲が集結します。何度もふるいにかけられて最終のテーブルに残った曲はどれも、①②でも解説しましたが、クオリティの高い音源と言えるでしょう。その中で勝ち残った、印象の良い「DEMO音源」、優秀な「DEMO音源」。この音源を、アーティストのプロモーションやら、宣伝会議等、いろいろなシチュエーションで、担当者、関係者は嫌という程、聴くことになります。
ここで潜在的に脳裏にすり込まれてしまうんでしょうね。ちょっとしたニュアンスや、音色もインプットされてしまうから、完成音源を聴いたときに、違和感を感じてしまうのでしょう。
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まとめ
このような事が重なって、「完成音源より、DEMO音源の方が良かった。」が発生してしまうのですね。「DEMOを越えられない!」というのもアレンジャー界隈ではネタのように話されることもあります。
音楽家としての理想は、「DEMOもいい!」「完成形はもっといい!」なんですけどね。日々そう言ってもらえるよう精進するのです。
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