カフェのカウンターに立つ男性の後ろ姿 写真を拡大

03

普通のさよなら、でいい。

音楽業界に長くいると、
いろんな「終わり」を見てきた。

バンドの解散、
アーティストの卒業、
スタッフの退職、
取引先との契約終了。

終わり方は、本当に人それぞれで。
で、最近あらためて思うんです。

「絶縁」って、する必要ないなぁって。

心の中でどれだけ
怒りの炎が燃えていても、
終わりなんて一瞬です。

ちょっと我慢して、

「今までありがとう」
「元気でね」
「いつかまた」
最後にこの一言を添えるだけで、
その後の人生が変わることだってある。

逆に、どれだけ腹が立っていても、
捨て台詞だけは
吐いちゃいけない。

「もう二度と会わないからいいでしょ」

うん、その気持ちはわかる。

でもね、この業界にいると
痛いほど知ってるんです。
その人とは会わなくても、
その人の友達と
仕事をすることがある。

その人の後輩が、
自分が勤めた会社の取引先の担当に
なることだってある。
(実際、あるんですよ、これが)

世の中は狭い。
音楽業界はもっと狭い。

大きな木の下のベンチと公園の売店

ライブハウスをやっていると、
よくわかります。
昨日お客さんだった人が、
今日は出演アーティストの
スタッフだったりする。

人の繋がりって、
線じゃなくて網なんです。
どこかを乱暴に切ると、
思わぬところがほつれてくる。

だから、絶縁じゃなくて、
普通のさよならでいい。

ドアを叩きつけて
閉めるんじゃなくて、
そっと閉めておく。

鍵はかけない。

また開くかどうかは、
未来の自分と相手に
任せておけばいい。

「ありがとう」の一言なんて、
世界から見れば小さい。

でも、言われた側には、ずっと残る。
そして実は、言った側の心にも、
ちゃんと残るんだよね。